2015年10月11日日曜日

新・自衛隊論

自衛隊を活かす会 編著、講談社現代新書、900円+税
安保法制をめぐる議論でもっとも苛立ったのは、憲法論と安全保障論とがごっちゃにして語られていることだった。憲法論は「戦争反対」という標語に単純化され、安全保障論は「外国の脅威」というイメージに単純化された。しかし、その内実は、憲法論は国民主権をベースにした政治哲学や社会思想の問題であるし、安全保障論は国際政治や軍事技術といったきわめて専門性の高い問題である。そういう互いに異質で複雑なテーマを整理しないまま議論しても生産的なものになるはずがない。結果、憲法論の「理想主義」vs. 安全保障論の「現実主義」といった図式において批評されたりしていたが、それはその図式自体が間違っている。憲法論という土台の上に安全保障論を築くべきなのであって、対立概念として天秤にかけるものではない。最近の出版でいうと、高橋源一郎×SEALDs『民主主義ってなんだ?』(河出書房新社)が憲法論の思想を問い直すものだったが、では、安全保障論に関しては何を読んだら良いだろう?と探していて見つけたのが、この『新・自衛隊論』である。本書は、現行の「日本国憲法」も「自衛隊」もポジティブに活かそうという主旨のもと、中国やアメリカの軍事政策を検証し、対テロ戦争下の治安活動の問題点を論じ、専門家による集団的自衛権の事例分析やPKOの現場レポートなどを記している。独特な用語もきちんと定義付けした上で使われているので読みやすいし、政治イデオロギー的な誘導もほとんど感じなかった。むろん、本書では語られない脱自衛隊から非武装中立へという平和主義の道も考えてみたいと思うが、それはまた別の議論を参照すべきだろう。