2015年11月3日火曜日

偽の神の子

『神々のたそがれ』(2013年)
この春に公開されたアレクセイ・ゲルマンの遺作『神々のたそがれ』も見直した。濃密な物語を断片的な生々しい描写に投影するゲルマン話法の集大成であり、簡単に読み解くこともできないので、俺の気に入った話をひとつ。まず、掲載した写真左の男がこの映画の主人公ルマータ。彼は地球人なのだが、本作の舞台であるこの未知の惑星においては「異教神ゴランの非嫡出子」とみなされ、人々は畏敬の念をもって接している。ただ、一部の者からはなかば疑いの目を向けられていて、両者のギスギスしたやりとりもおもしろい。こうした舞台設定のもと、写真右の少女アリは偽の神ルマータに対し「ゴラン神の子を身籠りたい」と露骨な性的挑発を試みるものの願い適わず、その後、処刑を逃れるのに必死なアリは、せめて自分の腹には神の子がいると証言してくれと懇願することになるのだが、あっけなく悲惨な事故死を遂げる。まるで人間の性と生存本能とが渾然一体であるかのような強烈なエピソードである。