2016年6月30日木曜日

表現と力

反戦ポスター「戦争−少数には善−大多数には悪」Carlos Latuff
日本が第二次世界大戦に突っ込んでいくときの芸術家たちの姿勢や行動を幅広くまとめた研究ってないのかな?(新書であればなお嬉しい)政府や軍部の言いなりになった人や、骨の髄からナショナリストに化けた人、むろん、必死に抗ったレジスタンスの記録も。反戦の士だから偉いとか、権力の犬だから糞とかっていうのを確認したいわけではなく、「政治」と「芸術」を対立させるのでもなく、近現代における「表現」の意味を考えてみたい。政治ってのも近代以降は、どんどん表現の問題に近づいていると思うんだよね。ネトウヨのデマだって表現だし。表現と力の問題。

2016年6月11日土曜日

ディストラクション・ベイビーズ

監督:真利子哲也 主演:柳楽優弥(2016年)
湧き上がる感情は不安や不快、ストーリーは陰惨、全編生々しい暴力描写ばかり、とても他人に薦められたものではない。が、俺にとってはこれ以上ない最高の映画だった。こんな充足感は深作欣二の『バトル・ロワイアル』(2000年)以来かもしれない。あ、いや、塚本晋也の『野火』(2014年)も良かったけど、『ディストラクション・ベイビーズ』の荒削りな挑戦には個人的共感もプラスして賛辞を贈りたい。主演の柳楽優弥は圧倒的だった。というか、初めて素晴らしい俳優なんだと知った(ゴメン!)。撮影も良かった。あのアンダー気味で、いくぶんクスんだ色がベタッと乗るような画調が大好きだ。そのカメラが捉えた、松山の入り組んだ海岸線のなんと見事なこと!映画のテーマと共振したこの風景だけでもチケット代の価値がある。とはいっても、最初から最後までほぼ殴る蹴るしかやってないこの映画の音楽は序盤以外に存在しないのだから(エンディングにはあるが)、そのぶん、暴力的世界を構築する音響表現に、もう一つ二つの工夫があって良かったかもしれない。物語や演出としては、最初の10分20分で方法論や方向性はよくわかり、だからその後は、この世界をどう完結させるかというところに関心が移った。たとえば、新井英樹の『真説ワールド・イズ・マイン』(2006年)なんかが頭をかすめたが、あの漫画のような展開はないだろうとも予想したので、さて、どうする?と興味津々に見た。まぁその「火消し処理」だけをとれば、やや消化不良の感も残ったが、そんなことは些末な細部にすぎんといわんばかりに魅力的な冒険を見せてくれたと思う。ただ、それでもお薦めはしない。でも、これが映画なんだよ!