2016年9月18日日曜日

戦後入門

加藤典洋 著、ちくま新書、1,400円+税
戦後史の問題を鳥瞰できる本が読みたくて手に取ったのだが、期待以上の好著。「原爆投下」という事件が「戦後日本」の政治的空間を準備したという加藤の見解は、今までほとんど意識してなかったので目から鱗だった。仮に、原爆が落とされなくても日本の敗戦は動かなかったわけだし、原爆には「戦乱期の悲劇」という以上のイメージをもっていなかった。しかし、そんな戦争の結果とは直接関係のない剰余の破片にこそ戦争の本質がより純化したかたちで現われるのかもしれない。加藤は、第二次世界大戦の「連合国」と「枢軸国」の対立に、たとえば「自由主義」vs「全体主義」というイデオロギー対立を見てとることへの疑義を呈する。そういった図式は事後的に考え出されたものではないのか?善なる自由主義と悪なる全体主義の戦いならば、国益の調停手段としての戦争ではなく、一方的に悪を成敗する戦争として語ることができるからだ。お前らが悪い!原爆を落とされたからって文句を言うな!無条件降伏せよ!というわけである。また、こうした戦争論を洗い直して現代政治への提言を行うのが本書の真の狙いであり、戦後日本の政治思想分析などもきわめてアクチュアルでおもしろい。予備知識なしで読み進められるのも最高だ。