2016年9月27日火曜日

となりのイスラム

内藤正典 著、ミシマ社、1,600円+税
イスラムへの偏見をなくそうという強い意志を感じる好著。中高生でも読めるよう書かれた平易な語り口が著者の現実的な危機意識に重なるように響いてくる。そういえばこの夏も、仏ニースの海岸で、イスラム女性がブルキニと呼ばれる水着を強制的に脱がされたという事件が話題になったが、こうしたイスラムへの「敵意」は、2001年9・11のテロをきっかけに急速に強まったという。以後、アメリカの仕掛けたイラク戦争をはじめ、長期化する中東の内戦や難民の爆発的増大、世界規模でのテロリズムの危機など「イスラム」の問題を避けて通ることはできない。事態がここまで悪化したその根底にはイスラムへの無知があるというのが著者の見解である。イスラム文化はたしかに欧米とは異なる価値観をもつが共存できないものではまったくない、むしろ、というふうに語られるイスラムの本質論や実際のイスラム教徒たちの肖像は、われわれ日本人の固定観念を払拭して余りあるし、なにより人間味にあふれ、感動的ですらあると思う。