2017年6月13日火曜日

大本営発表


辻田真佐憲 著、幻冬社新書、860円+税
素晴らしい本だった。とはいっても、読み終えて、ドーンと重い気持ちにさせられてしまったが、それは日本のメディアと政治の癒着がいかに悲惨な命運を辿ったかということを、史実に基づき、坂を転げ落ちるかのような必然として立証したからだと思う。現実の残酷さをまざまざと思い知らされた、というか。普通の読みものであれば、いかに「大本営発表」がデタラメだったかに焦点を当てるだけでも良かっただろう。だが本書は、なぜそんな報道になったかという本質的な原因とその後の推移を逐一検証していく。なので、読み進めるうちに、現代の日本社会だって何も変わってないじゃないか、という気がするのだ。たった一つの発表が正確性を欠いたって大きな問題にはならない。だだ、それが常態化することの恐ろしさ。もともとは、日本軍も連戦連勝していたため戦果を粉飾する必要もなかったのだが、戦況が変わると、次第に大本営自身も正しい戦況を把握できなくなった。そのため重大な戦略判断まで誤り、みずから自滅の沼に足を突っ込んでしまったのである。そんな大失態をわれわれは戦後も犯している。まだ記憶も生々しい3.11によって露呈した原発政策のことだ。日本政府が世論を誘導して築き上げた安全神話の常態化が、原発の致命的な電源喪失を招いたのだから。それにしても、戦争末期の特攻礼讃や本土空襲、原爆投下などの悲劇は、まともな報道さえ機能していれば回避できたかもしれない。太平洋戦争の日本軍は、正しい情報を失い、まるで盲目の狂犬のように敵味方かまわず襲いかかっていたのである。