2018年4月5日木曜日

ゴドーを待ちながら

岡村美奈子 訳、白水社、3,000円+税
新訳が出たというので読み直してみた。ほんと、すごいな、この戯曲。再読しながら強く感じたのは、この作品、ヒューマニズムの外部からヒューマンを見てるよな、ということだった。たとえば、ふだん東京の小劇場演劇を見ていると、そのほとんどすべてがヒューマニズムの内部に価値基準を置いていると思う。たとえ、どんなに残酷な物語を語っていたとしても、その衝撃そのものはヒューマニズムを前提にした心的効果の一つにすぎない。ヒューマニズムの外に出るというのはそう簡単じゃないのだ。にもかかわらず、ベケットをはじめとする20世紀芸術の才能は二つの世界戦争をまのあたりにし、近代のヒューマニズム、人間中心の思想や価値観の脆弱さに危機感を覚え、「不条理文学」「超現実主義」などと呼ばれる特異なアートフォームを発明した。まぁこうしたカテゴリーに依拠して語るのも危ういしつまらないが、それでも『ゴドーを待ちながら』の言語空間には戦後芸術史のエッセンスが凝縮されているし、この戯曲が、われわれの身近な演劇が忘れかけている何かを記憶していることも確かだろう。本書に収録された『エンドゲーム』も『ゴドー』が切り開いた地平をさらに進化させていて圧巻だった。